2012年05月02日

【2011−2012年度第5回連続講演会】第14回講演予告
「ピラミッド建設後のお供えの様子-ラ・ホヤ遺跡の一括資料から-」

2012年5月8日 (火) 朝の部10:30、 夜の部19:00

ピラミッドの建設と関係する考古学遺物には、大まかに分けると三つの種類があります。建造物を造る前に埋められた供物や、建築材として構造物(壁や床)に含まれる土器片や石製品、そして、建造物を造った後に床上に設置される土器や土偶などです。

第14回講演では、この三つめの建造物を造った後に設置されたと考えられる土器についてお話します。

はじめに、ラ・ホヤ遺跡の特徴に触れ、ピラミッド建設に伴う多くの資料が見つかった東建造物と呼ばれる建物について、ご紹介したいと思います。とりわけ、ピラミッド建設後に配置される形で検出された頂部出土の考古学資料と大量の供物と命名された一括遺物についてお話したいと思います。そして最後に、これら二種類の考古学資料をもとに、儀礼が行なわれていた可能性について述べたいと思います。

1ラ・ホヤ遺跡
ラ・ホヤ遺跡は、ベラクルス州中部地方南地域に位置します(図1)。UNAM人類学研究所のアニック・ダニールズ先生が1980年代から続けてきた、一連のコタシュトラ川流域における遺跡の踏査・測量・確認のための発掘といった調査によって(注1)、この地域における古典期の主要な遺跡の一つであることが確認されています。

ピラミッドは土で造られているので、レンガ造りのための材料としてここから土が取られており、1937年当時確認された遺跡を構成する18基もの建造物群は、もはや残り10%に満たないものとなっていました。そこで、今残っている建造物が全て消滅してしまう前に、出土資料、建造物の構造やその建設時期などの確認を行う目的で、2004年よりこの遺跡の緊急発掘調査が開始されました。

その結果、建造物の構造などが理解され、遺跡の重要性が認められるようになりました。そして2008年からは遺跡を保存・修復し保護するという方針のもとで、現在も調査が続けられています。

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図1 ベラクルス州中部地方南地域におけるラ・ホヤ遺跡の位置 
(Gobierno del Estado de Veracruz 2000 より作図)


2東建造物
現存する三つの建造物のうち、もっとも破壊がすすんでいるのが東建造物と呼ばれる土のマウンドでした。そのため、緊急性がもっとも高いこの建造物から調査が開始されました(写真1)。

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写真1 奥に見える東建造物の残っている部分と測量の様子

3東建造物から検出された二つの一括資料(A頂部出土資料、B大量の供物)
A 頂部出土資料
東建造物の上部から発掘調査を開始した際に、一定の区域において土器資料が25点ほど建造物床面より上部で見つけられました。これらの土器資料は特定の区域に分布しており、まとめて頂部出土資料として登録されました。これらの土器資料は、皿・椀・壷などであり、日常生活において使用される土器からなっていました。

このうち興味深いものは、同じ形をしている二つの土器資料が対となって四点ほど、まとまって見つかったことです。これらの土器の組み合わせから、どういったことが読み取れるのでしょうか。

他地域で出土した類似する資料を比較すると、資料の出方と建物との関係から、二通りの解釈があると思います。まず一つは、こうした対の資料を東の建造物を建設した後に意図的に配置したとする建設後の儀礼に関する資料である可能性です。そして、もう一つはその場に廃棄されたものだとする考え方です。本発表ではそれぞれの可能性について少しお話ししたいと思います。

B 大量の供物
調査がすすむにつれて同じ東建造物のさらに下層から、建造物の床面上に、今度は別の土器資料が大量に見つかりました。頂部出土の資料とは内容が大きく異なり、ここでは、椀・皿・壷の他に大量の小皿と、総計すると800点以上の土偶が一括で見つけられました。さらにこの下の層からは、複数の埋葬が見つけられました。

同じ建造物の頂部から出土した資料と比較すると、資料の内容においてとりわけ小皿や土偶が大量に出土する点、またこれらが特定の区域に層状に重なって見つかっていることなどの違いがあります。この違いから、どういったことが考えられるのでしょうか。

特定の区域に、2,000点以上もの資料が一括して出土する様子が確認されており、民俗学の事例などから類推すると、その場において何らかの儀礼行為を集団で行った可能性があるようです。

最後に、これら二つの一括して見つかった土器資料の様子から、建設後のお供えの特徴と資料の分析より類推される儀礼の様子について、少しお話ししてみたいと思います。

(注1) メソアメリカ古代文化の研究では、一定の地域における遺跡の組織的な踏査・マウンドおよび地形測量・遺物の表面採集などを行い、マウンドの規模や配置を比較し、遺物の分布などを研究する方法があり、これは一般にセトルメント・パターン研究法とよばれています。詳しくは【2007年度連続講演会】第4回講演 予告「土器を拾って歩こう。〜発掘調査とは別の考古学調査方法から〜をご覧ください。

Gobierno del Estado de Veracruz
2000 Atlas Geográficas del Estado de Veracruz/México, Secretaría de Comunicaciones, Gobierno del Estado de Veracruz, Xalapa, (1992 1a ed.)

黒崎 充(考古学、メキシコ国立自治大学 哲文学部 博士課程)
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2012年04月18日

【2011-2012年度第5回連続講演会】第13回講演予告
「メキシコの博物館2 メキシコ国立美術館絵画鑑賞の手引き –20世紀絵画からメキシコの昔の風景をイメージする-」

2012年4月24日(火) 朝の部10:30、夜の部19:00

メキシコ・シティーの歴史地区 (Centro Histórico) にあるメキシコ国立美術館 (MUNAL) は、今年創立30周年を迎えます。多くのメキシコ人にとってこの美術館は、同じく国立の人類学博物館(チャプルテペック公園内)と並び、自分たちの国の歴史や文化を誇りを持って伝える大切な場所です。しかし、人類学博物館と比べ、外国人向けの観光ルートに組み込まれたり、日本のメディアに取り上げられる事が少なく、日本人にとって馴染みの深い画家の作品も多くはないことから、メキシコに住む方々の中にも「敷居が高い」と感じる方がおられるのではないでしょうか。そこで今回の講演では、この美術館の魅力を探す「バーチャル(仮想)訪問」をしてみたいと思います。

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確かに、メキシコ国立美術館が扱うテーマには、親しみを覚えづらい面があると思います。人気のマヤ文明を始めとする、先スペイン期文化を主に扱う人類学博物館と比べ、日本のテレビ番組等で話題にされる事は少なく、事前に読める分かりやすい資料もあまりありません。しかし、幾つかの鑑賞ポイントを抑えて訪れるだけで、広い館内を飽きる事なく散策できる楽しい美術館です。ただ、このように規模が大きく、展示室の数も多い美術館の全てを一度に見尽くすことは、いかに美術鑑賞が好きな人であっても大変です。そこで、一回の訪問に対してあまり壮大すぎない目標を定めるのも一案です。お目当ての作家がいれば、その作家の作品に絞って鑑賞するとか、メキシコ史の中で特にイメージする時代があれば、その時代にまつわる作品を探して歩くというような簡単な「テーマ設定」をしてみるのです。

鑑賞する作品をある程度限定しても、それぞれの作品が、簡単には理解し難い奥深い歴史を持っていますので、まずは肩の力を抜き、シンプルな視点から鑑賞を開始する事で、楽しみながら少しずつ核心に近づいて行くと良いと思います。当美術館には、かつて教会の壁や祭壇を飾る為に描かれた絵画が、いろいろな経緯を経て展示されています。これらの絵が元あった場所で発揮していた宗教的な特性の一部は、置かれる環境が変えられた事で失われていたりします。そのような失われた過去の意味を探し当て、正確に理解する事は、例え専門家であっても困難ですが、教会とは全く異質の空間(展示室)に置かれた事で新たに見えてくる(感じられる)こともあり、それは美術館での絵画鑑賞の醍醐味の一つだと思います。例えば、宗教画の「大きさ(サイズ)」だけを取っても、装飾の多い教会の空間からシンプルな展示室に移されることで、その「巨大さ」をより実感できることがあります。小さな「発見」ですが、次に教会で同じような大きさの宗教画を見た時、その絵がさほど自分の「好み」に合うものでなくても、描かれた宗教的背景(信仰の深さ、教会権力の大きさ)に興味を持ったり、それ程の規模の絵画を飲み込む教会建築やその内装のスケールの大きさを、よりリアルにイメージできるようになるかもしれません。

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今回の「バーチャル訪問」の終着点では、大きく3つに分類される当美術館の所蔵コレクション(「コロニアル時代の西洋化(Asimilación de Occidente)1550-1821」、「独立戦争以降の国家建設(Construcción de una nación)1810-1910」、「新国家の造形芸術戦略(Estrategias plásticas para una nueva nación) 1910-1955」)の中から、主に2番目の時代に着目し、十九世紀と二十世紀のメキシコ絵画に描きこまれたモチーフの中から、現在のメキシコ・シティーでも目にすることのできるものを探し出し、古い時代のメキシコの生活や町の様子をイメージしてみたいと思います。

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今回の話を通して、メキシコ国立美術館に苦手意識がある方にはそれを払しょくしていただければ、また、既に美術館の魅力を感じておられる方には新たな視点を持って再訪するヒントを見つけていただければ幸いです。

渡辺裕木 (保存修復学・博物館学/ メキシコ国立修復保存学博物館学大学修士課程・ADABI, A.C.)
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